自動車輸出物語 000-080
記載日付:2009年2月10日
ライター:鈴木富司
番号:000-080
タイトル:商事会社による自動車開発 その2 (コルトミニ)
日本ではミニキャブという名前で売り出していた軽自動車のトラックがあります。それを、コルトミニという名前でインドネシアでも販売をしたのです。通常ですと完成車を日本から送り、市場の動向をみながら国産化をする訳ですが、当時インドネシアでは完成車は輸入禁止でした。いきなり国産の為のプレス型をつくったり組立ラインを設置して売り出すのです。
例によって、インドネシア市場に合った車にしたいと言う要望を出して、バスシャーシー型のコルトミニにしたわけです。発売日も決めて、宣伝広告も準備して生産の状況を見ていたのですが、2つの事件ともいうべき事態が発生しました。
モネ君という技術担当の役員さんが、「鈴木さん、大変だ!」って事務所に飛び込んできました。状況を聞いて、思わず唸ってしまいました。工場から上がってきた車を引き取りガソリンを注入したら、吹き上げてきてガソリンが入らないというのです。そのままでは、とても地方に出荷できません。ガソリンタンクは、設置する場所によって、給油管の長さが違います。トラックの場合は、管が短いから、吹き返しの現象は起きないのですが、床の底の方に配置した、管の長い場合は空気を逃がしてやる仕掛けが必要なのです。
何しろ、酷い状態のカロサリーというボデー屋で、このコルトミニのシャーシーを自己流で焼き切ったり溶接をして、ボデーを架装するものですから、余分な部品は付けたくないのです。日本では複雑な配管や装置がついていたのを、「全て不要です。」「付いていたら危険です」と、現地判断で簡単な構造に設計変更をしていたのです。
先輩に「生兵法は大けがのもと」と新入社員の時に言われていたのに、大失敗でした。そこで、現地部隊としては大急ぎで対策を施しました。モネ君と第25話「ヨーロッパの一匹狼の技術者って凄いマル」でも紹介したドイツ人のオートナー氏にも力も借りて吹き返しのないガソリンタンクに仕上げて発売に間に合わせたという物語です。
これも、「鈴木さん大変です。」って驚かされた事件の物語です。輸送車の問題です。当時、専門の運送業者などおりません。ジャカルタからスラバヤまでの陸送も、われわれの守備範囲です。小さな軽自動車をいくら人件費の安いインドネシアでも、1台ずつ輸送していたら、コストが合いません。そこで、自動車輸送車を設計させました。2トントラックをベースに3台だったか、4台のコルトミニを載せる自動車運搬車です。
スリップして、荷台に載らないというのです。裏のカープールに飛んで行ったら、タイヤが匂うほどスリップさせているので、直ぐ止めさせました。荷台もついていない軽自動車ですから、考えてみたら当たり前、後ろが軽すぎて、急勾配を登らなかったのです。何台載せられるかは、経済性に大きな影響がありますから、図面を見せて貰ったりして議論をしていたのですが、輸送の専門家ではありませんし、気が付かなかったのです。
どうやって、解決したかは、はっきり覚えていませんが、全権を持っていますから、何でも指示できます。確か、載せるジャカルタと降ろすスラバヤのカープールに傾斜の緩い助走台を設けさせたかと思います。あるいは、ロープで牽引して引き上げる方式であったかも知れません。
内地の商事会社では、専門家を見つけて注文をすれば良いのですが、海外で事業をする場合には、自分で知恵を出しながら、現地の人たちと解決をしなければならないのです。それはエキサイティングなことでした。「大変だ」って言われる度にファイトが湧きました。解決すれば、それだけ達成感もありますし、こうやって30年前のことでも、思い出して楽しんでいます。
次回も、開発に関する話題を思い出しましょう。
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鈴木富司
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