自動車輸出物語 000-081
記載日付:2009年7月30日
ライター:鈴木富司
番号:000-081
タイトル:商事会社による自動車開発 その3 (コルトディーゼル)
日本ではキャンターと称している中型トラックを、インドネシアでは、コルトの
大成功にあやかって「コルトディーゼル」という名前で売り出しました。
この物語は、開発というほど大げさなものではありませんが、その市場に合った
仕様にして売り出すことが、いかに重要かを示すことと、私の密かな誇りとして
記録をしたいと思い筆を取った物語です。
私が駐在員として赴任をした1976年のことと思いますが、当時コルトディーゼル
の組立・販売は月間100台前後だったと記憶します。ダイハツさんがトップで
シェアーは2位だった筈です。赴任をしたばかりでしたが、直感では凄く伸びる車種
だと思っていました。そこで社内で倍増論を唱えたのですが、そんな無茶なと、
反対意見も結構あったのです。しかし、新型に切り替わるのを機会に組立に必要な
治具を2セット注文をして、ジャカルタとスラバヤの両方の工場で組立ができる
ように手配をしてしまいました。
問題は、どういう仕様にするかと言うことが問題でした。重装備にすると
値段が上がってしまうし、その仕様を決める会議のことは、昨日のように覚えて
います。「エギゾーストブレーキ」というエンジン排気でブレーキ力を増加する
装置を付けるがどうかが分かれ道でした。私は、どうしても、そのブレーキが
付けたかったのです。新しもの好きという趣味の問題も多少はあったかも知れ
ませんが、使い方を熟慮した結果と書けば成功物語になります。
インドネシアでの営業車の使い方には特徴があって、車のオーナーと運転手には
約束事があって、燃料とか消耗品は、運転手が負担するのが普通です。オーナーは
車をあくまで投資対象と考えて、1日いくらで運転手に貸し出します。運転手は、
荷物や人を運んで、収入から燃料と消耗品を払って、残りを助手と分けます。
そこで、ブレーキの消耗品は馬鹿にならないのです。スマトラの奥地は、勿論の
こと、ジャワ島でも、結構山坂が多いものですから、ブレーキは多用されます。
「エギゾーストブレーキ」を付けてやると、ブレーキの消耗品が激減するのです。
ブレーキ交換の時間も少なくなりますので、その間も稼げるわけです。
運転手にとっては、とても「良い車」となります。つまり「稼げる車」になる
わけです。運転手に評判がよい車は、借り手も多くなりますが、逆に評判の
悪い車をオーナーが買っても借りてくれる運転手が集まらないのです。
こういう賃貸関係は、全く自由市場が成立するのです。因に、中古車だけでなく、
新車でも、毎日「市場価格」が立つのですから、日本とは大分事情が違います。
生産を余り上げると「市場価格」が下がってしまう世界なのです。
半年もしない内から、コルトディーゼルの人気は爆発的に上がりました。目標の
月産200台は、あっという間に達成したと記憶しています。帰国する2001年
には、月間2千台を超えていましたから、あの「ぼこぼこぼこ」という「エギゾー
ストブレーキ」の音を聞くと、企画マンの満足感は、最高潮になります。
実は、この成功物語には、裏物語もあったのです。私は宣伝広告を担当していま
して、全権をもっておりました。今月はどんな広告を打つかとか、どんなコマーシャル
フィルムをつくるかも、即決できる立場だったのです。コルトディーゼルに賭けて
いましたので、全予算を投入しました。全国的に有名な喜劇役者を起用して、
3本のフィルムをつくりました。
他の車種の広告を一切やめて、全部コルトディーゼルに投入したのです。
公園で子供たちがコマーシャルの真似をしているのを発見して、効いて
いるなと実感をしたものです。昔、中村敬止親分がコルトを大々的に宣伝をした
手法を見ていましたから、インドネシアでの広告の爆発的効果を知っていたのです。
それに、忘れてはならないことあがあります。実はブレーキ性能の重要性などを
認識できたのは、全国をくまなく歩き回った営業の吉田治邦さん(第74話
「南京虫にやられながら販売店網を築いた吉田治邦さん」)やサービスの
田村一彦さん(第70話「火の玉のような永住日本人サービスマン」)の意見や
後押しがあってのことだったのです。商事会社の強みは、現場を本当によく知って
いる人たちが居るということでもあるのです。
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ホームページをつくる仕事をやっています。「こんなビジネスをやりたいんだ」と
仲間から頼まれて、画面設計からコンテンツ制作も全部やってお目に掛けると、それを
見ながら議論をして、ビジネスそのものも見直すというやり方です。
画面を見るとイメージが膨らみ、新しいアイデアも誘発するようです。
私は、最新のBiND FOR WEBLiFE*2.53というソフトを使い、無から作り出すのを
楽しんでいるというところです。
「生涯現役」と看板をかけていると、思わぬ仕事が舞込んできます。世の中、
皆さん忙しいものですから、夢のような話には余り時間が掛けられないのでしょうね。
若い人に混じってわいわいやるのが、老後というか老中の最高の生き方と思って
います。
鈴木富司
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